鋳物とは?種類・製造方法・用途まで解説!

金属を熱で溶かし、型に流し込んで製品を作る技術を鋳造と呼びます。鋳造によって作られた製品が鋳物です。鋳物は私たちの暮らしに欠かせない技術で、自動車部品から日用品まで幅広く活用されています。

古代から続く歴史ある製造技術でありながら、現代でも重要な役割を果たしているのです。本記事では鋳物の基本的な知識から製造方法、用途について詳しく解説していきます。

鋳物とは?

鋳物とは?

鋳造とは、溶解した金属を型の空洞部分に流し込み、冷却して固化させる製造方法です。鋳造によって作られた製品が鋳物と呼ばれています。鋳造は複雑な形状の部品を効率的に大量生産できる特徴があります。

型には砂型、金型、樹脂型、石膏型などが使用されます。中空部分の製造も可能で、大きさに制限がない点も大きな利点です。鍛造と比較すると強度は劣るものの、加工工数が少なくコストを抑えられます。

鋳物が使われている身の回りのもの

鋳物は身近な場所で数多く使用されています。街中では、マンホールの蓋、街路灯、橋の構造部分、フェンスなどが代表例です。家庭では炊飯器、洗濯機、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの家電製品に活用されています。

また、フライパンや鍋などの調理器具、ストーブやガス器具も鋳物製品です。自動車産業では特に多用されており、日本国内の鋳鉄生産量の約65%、ダイカスト生産量の88%が自動車用部品として使われています。

鋳物は古くから続く金属加工の技術

鋳造の歴史は紀元前4000年頃のメソポタミア地方まで遡ります。紀元前3000年には銅を鋳造して武器や農機具、日用品が製造されていたそうです。

日本では紀元前300年頃に南朝鮮から技術が伝来し、1世紀には銅鐸や銅鏡、刀剣が作られるようになりました。奈良時代には仏像や梵鐘の製造が始まり、平安時代中期には日本各地に鋳物作りが広がりました。現代でも南部鉄器のような伝統的な鋳物が世界的に評価されています。

鋳物に使用されている材質

鋳物には用途に応じてさまざまな金属材料が使用されています。各材料には独自の特性があり、製品の要求性能に合わせて選択されます。

材質主な特徴用途例
鋳鉄強度・防振性に優れる、低コストで大量生産可能自動車部品、マンホール蓋、調理器具
鋳鋼耐食性・耐熱性・耐摩耗性に優れる歯車、クランクシャフト、化学プラント用部品
銅合金電気・熱伝導性、耐食性に優れ、美観に優れる水道蛇口、電気部品、仏像
アルミニウム合金軽量で熱・電気伝導性、リサイクル性に優れる自動車エンジン部品、建築用部材
マグネシウム合金実用金属中で軽量、振動吸収性に優れる電子機器筐体、カメラ部品
亜鉛合金低融点で鋳造性良好、寸法精度に優れるドアハンドル、コネクタ部品
チタン合金軽量・高強度・耐食性に優れる航空機部品、医療機器

主な鋳造加工の種類

主な鋳造加工の種類

鋳造には製品の形状や要求精度、生産数量に応じてさまざまな製造方法があります。各方法には特有の長所と短所があり、適材適所で使い分けられています。

砂型鋳造

砂を固めて作った型に溶融金属を流し込む製造方法です。生砂型、シェル型、ガス硬化型の3種類があります。

生砂型は水と粘土を混合して突き固めて硬化させます。シェル型は熱硬化性樹脂を混ぜて加熱硬化させる方法です。ガス硬化型は水ガラスを混ぜてCO2ガスで硬化させます。型の除去が容易で寸法精度と生産性に優れています。

金型鋳造法

金属製の型を使用して重力を利用し溶融金属を鋳込む方法です。型が繰り返し使用可能なため、機械的性質に優れた鋳物を大量生産できます。金型に塗装を施すことで型の寿命を延ばすことが可能です。

初期投資は高くなりますが、大量生産では単価を抑えられます。低圧鋳造法や高圧鋳造法、ダイカスト法なども金型を使用した製造方法です。

精密鋳造

模型にろうを使用するインベストメント鋳造法とも呼ばれています。ロストワックス精密鋳造法が代表的な手法です。

ワックス模型を使用することで、鋳肌や寸法が格段に優れた製品を製造できます。ジェット機関の部品や美術工芸品の製造に多く利用されています。複雑で精密な形状に対応でき、加工の削減が可能です。

遠心鋳造法

遠心力を利用して中空円筒形状の鋳物を製造する方法です。水道管やガス管などの鋳鉄管製造に多用されています。

溶湯を高速度で回転する鋳型に注入することで、中子を使用せずにパイプ状の製品を作ることが可能です。遠心力により金属の密度が向上し、強度の高い製品が得られます。均一な肉厚の管状製品に適しています。

連続鋳造

溶けた金属材料を連続的に鋳型に注湯することで製品を直接製造する方法です。

半製品はスラブ、ブルーム、ビレットの3つに分類されます。歩留まりと生産性が大幅に向上し、コストも削減できるため大量生産に適しています。鉄鋼業界では主流の製造方法となっており、効率的な大量生産が可能です。

鋳物に生じる主な不具合

鋳物に生じる主な不具合

鋳造過程では製造条件や材料の状態により、さまざまな不具合が発生する可能性があります。品質向上のためには不具合の原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

寸法不良

製品が所定の寸法にならない不具合を寸法不良といいます。設計時のミス、型の加工や組み立てミス、鋳造工程でのミスが主な原因です。設計段階での適正な寸法設定、型の精密な加工と正確な組み立て、鋳造条件の適正管理が対策として挙げられます。測定器具の精度確保と定期的な校正も重要な要素です。

ひけ巣

鋳物内部に発生する複雑な形状の比較的大きな空洞をひけ巣と呼びます。液体から固体への相変態時の体積収縮により発生します。材料によって凝固収縮率が異なるため、それぞれに適した対策が必要です。押湯による溶解金属の補給、冷却速度の調整、湯口や湯道の設計変更などが効果的な対策となるでしょう。

気泡(ブローホール)

鋳物内に生じる丸みを帯びた空洞で、空気や各種ガスが溶融金属に巻き込まれることで発生します。溶解金属と介在物との反応、鋳型や中子の成分・水分との反応、湯流れやガス排気などの物理的要因が原因です。適切な脱ガス処理、鋳型の乾燥管理、注湯速度の調整などが対策として有効です。

割れ

割れとは、鋳物表面に発生する亀裂のことです。凝固中、凝固後の冷却過程、時間経過後に発生する場合があります。急激な温度変化による熱応力、材料の熱膨張係数の違い、拘束条件などが原因となります。鋳型の分割、取り出しタイミングの適正化、冷却速度の調整、応力緩和のための設計変更が対策として考えられます。

湯回り不良

鋳型内を溶融金属が完全に充満できず、鋳物形状が不完全になる不具合です。湯回り不良では隅や角、薄肉部に欠肉が発生します。湯境では表面層に境目が現れ、湯じわでは表面に浅いしわが生じます。注湯温度の適正化、湯口・湯道の設計改善、鋳型の通気性向上などが有効な対策です。

まとめ

鋳物は溶融金属を型に流し込んで製造する古くからの技術でありながら、現代産業において重要な役割を担っています。材質や製造方法を適切に選択することで、複雑な形状の製品を効率的に大量生産できる点が大きな特徴です。自動車部品から日用品まで幅広い分野で活用されており、私たちの生活を支える基盤技術といえるでしょう。

大田区の有限会社関鉄工所では、大型部品から小型部品まで幅広い金属加工に対応しています。横中ぐり盤やマシニングセンターを活用した精密加工、機械装置の組立て・修理、研究開発案件まで承ります。

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